フグは無毒のフグ毒の匂いを嗅ぐことが出来る:part2

大学院生の鈴木君の論文がChemical Senses誌に公開になりました。ミドリフグが自身の体内にテトロドトキシン(TTX)と一緒に蓄積しているTTX類縁体(5,6,11-trideoxyTTX)を匂いとして感知していることを行動・形態から示したものです。

(2022.10.11追記:この記事を書いたときはクサフグの方の論文がScientific Reports誌にアクセプトになる前だったので書けなかったのですが,この論文は内容的にはクサフグの論文の続編となります。ミドリフグ Dichotomyctere nigroviridisは東南アジア〜南アジアに棲息する汽水フグの一種で,これまでにTTX(TTX類縁体)への誘引が報告されているクサフグ Takifugu alboplumbeusやトラフグ Takifugu rubripesが属するTakifugu属のフグとは系統・地理分布的に離れた有毒フグです。この研究によって5,6,11-trideoxyTTXに対する嗅覚感受性が有毒フグに一般的な性質であるかもしれないこと,またこのあとに示す細胞種特異的マーカータンパク質の発現から5,6,11-trideoxyTTXに応答する嗅細胞の種類を突き止めることが出来ました。)

少し読み込みに時間がかかるかもしれませんが、この記事の下に実際の行動実験の動画を掲載しています。動画の途中で水槽(といってもホームセンターで買ってきた洗面器ですが)の中央に水溶性のジェルに溶かし込んだ5,6,11-trideoxyTTXを投与すると、それにミドリフグが引き寄せられる(紫色で示した水槽中央部に盛んに入るようになる)様子をみることができます。このような行動は鼻を除去したミドリフグでは観察することが出来ません。

さらに我々は神経活動マーカータンパク質抗体を用いた免疫組織化学によって,ミドリフグ嗅上皮に存在するクリプト型嗅細胞と呼ばれるタイプの嗅細胞が5,6,11-trideoxyTTXを検出していることを突き止めました。

A:5,6,11-trideoxyTTXに暴露した嗅上皮の神経活動マーカー抗体染色像,B:同視野のクリプト型嗅細胞マーカー(S100)抗体染色像,C:AとBの合成画像,D:匂いを溶かすのに使用した人工海水のみに暴露させた嗅上皮の神経活動マーカー抗体染色像

フグはTTXを自分の体で作り出すのでは無く、バクテリアが産生したTTXを食物連鎖で濃縮して防御物質として利用しているようなのですが(ほぼ確定なのですが、未だ共生細菌によるという節も否定しきれずに残っています)、今回の研究により、5,6,11-trideoxyTTXをクリプト型嗅細胞を用いて匂いとして感知することでTTXを含む餌を見つける手がかりに使っているのではないかということが示唆されました。

Suzuki, T., Nakahigashi, R., Adachi, M., Nishikawa, T.& Abe, H. (2022) Green spotted puffer can detect an almost nontoxic TTX analog odor using crypt olfactory sensory neurons. Chemical Senses, 47: bjac011
https://doi.org/10.1093/chemse/bjac011

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